コロナウイルスが流行り始めた頃、外出せずに楽しめる趣味として植物育成を始めました。
そんな中、ネットで偶然見つけたビカクシダ・リドレイ。
育ててみたいと思ったものの価格は高く、さらに寒さや蒸れに弱く育成が難しいと知り、サボテンすら枯らしていた私は「きっと無理だろう」と感じていました。
それでも気になって調べていくうちに、ビカクシダは胞子から増やせることを知ります。
しかもフリマサイトでは胞子が手頃な価格で手に入る——それならやってみようと始めたのが、胞子培養でした。
この記事では、園芸初心者だった私がビカクシダの胞子培養に挑戦し、板付けまでたどり着いた766日の記録を紹介します。
失敗の連続から少しずつ成功に近づいていった過程と、気づけば植物の魅力にどっぷりハマっていった軌跡。
これから胞子培養を始めたい方、すでに挑戦して悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。
この記事で分かること ・ビカクシダ胞子培養の実際の流れ ・発芽から板付けまでにかかった期間 ・初心者が失敗したポイントと対策
ビカクシダ胞子培養の全体の流れ【766日のタイムライン】


Day1 胞子播種
Day40 発芽
Day101 前葉体
Day149 胞子体
Day 237 スペーシング
Day701 鉢上げ
Day766 板付け
なぜビカクシダ胞子培養をやろうと思ったのか

正直に言うと、このときは「本当にできるのか?」という不安の方が大きかったです。
ビカクシダ・リドレイに惹かれたものの、調べれば調べるほど「難しい」「初心者には無理」という情報ばかり。
サボテンすら枯らしていた自分に育てられるとは思えませんでした。
それでも諦めきれなかったのは、「失敗してもいいから一度やってみたい」という気持ちがあったからです。
完成された株を買うのではなく、ゼロから育ててみたい。
うまくいく保証はないけど、もし成功したら絶対に面白い。
そんな半分勢いのような気持ちで、胞子培養をスタートしました。
今振り返ると、この“軽い気持ち”が長く続けられた理由だったのかもしれません。ただこのときは、ここから766日も続くとは思っていませんでした。
2020年6月22日~ 胞子を手に入れて播種|最初のハードル

胞子を手に入れたとき、まず感じたのは「これ、本当に発芽するのか?」という不安でした。
見た目はただの細かい粉のようで、正直これが植物になるとは思えません。
さらに、この胞子をどんな容器でどんな土で播けばいいのか。
培地はどのくらい湿らせればいいのか、胞子はどのくらいの量を播けばいいのか。
播種の段階でも迷うことばかりです。
当時はビカクシダ胞子培養の情報もほとんどありませんでした。
それでもとりあえずやってみようと、半分手探りの状態で播種。
ただ、このとき一番大きかったのは「この方法で合っているのか分からない」という不安でした。
何も変化が起きない時間が続く中で、本当にこれで良かったのかと何度も考えたのを覚えています。
実際に使った容器と培地(ちょっとした失敗)
このとき使用したのは、100円ショップで購入した3個で100円の透明の小さな蓋付きタッパーと酸度無調整ピートモスでした。
手軽に揃えられるもので始めたのですが、今振り返るといくつか失敗もありました。
まず、容器が小さすぎて胞子を薄く均等に播けなかったこと。培地の湿度を気にしすぎて、霧吹きするたびに下の方に水が溜まり結果的にカビが出やすい環境になっていたと思います。
さらに、培地が酸性になってしまったために発芽やその後の成長が遅くなってしまったと思います。
当時は「とりあえず清潔な土に播いて湿らせれていればいい」と思っていましたが、この最初の環境作りがその後に大きく影響しました。

2020年7月31日~ 発芽したけどこれは成功?失敗?

播種からしばらく経って、培地の表面にうっすらと緑色のものが見え始めました。
ただ、この時点ではそれが「発芽」なのか「コケ」なのか全く分かりませんでした。毎日蓋代わりのラップ越しにライトを当てて、スマホのカメラを拡大して見ていました。
学校の理科の授業では、胞子からすぐに前葉体になると習っていたので、この緑色のコケのような、細かい糸くずのようなものが胞子から発芽したものなのか、まだこの時は分かりませんでした。

2020年9月30日~ 少しずつ前葉体が広がる


播種からしばらくして、培地の表面に小さな前葉体がポツポツと現れ始めました。
最初は気づくかどうかくらいの小さな変化でしたが、日を追うごとに確実に数が増え、少しずつ大きくなっていきます。
気づけばそれが広範囲に広がり、「ちゃんと育っている」という実感に変わっていきました。
この頃は、毎日のように容器をのぞき込んでは変化を確認するのが楽しみで、胞子培養の面白さにどんどん引き込まれていきました。
今回カビは出なかったが、別の培養ではカビやアオコ、謎の植物が発生した
今回の培養では、この段階でカビが発生することはありませんでした。
ただ、これはあくまで「たまたまうまくいったケース」です。
今までの胞子培養では、同じような環境でもカビが発生した時やアオコ、はたまた謎の植物に成長を邪魔されることもありました。


特に前葉体が広がり始めるタイミングは、湿度が高く蒸れやすいため、カビなどが出やすい時期でもあります。
環境やタイミングによって結果が変わるため、常に観察と素早い対応が必要になります。
👉 カビが発生したときの原因と対策はこちら
(内部リンク:トラブル記事)

2020年11月17日~ 胞子体が出現|一気に楽しくなる瞬間
初めて胞子体を見つけたときの感動

前葉体が広がってしばらくした頃、それまでとは明らかに違う形のものが見えるようになりました。
小さな葉のような形をしたものが、ポツポツと現れ始めます。
このとき初めて「これが胞子体か」と気づき、かなり嬉しかったのを覚えています。
それまでの変化とは違い、「植物として育っている」とはっきり実感できた瞬間でした。
どんどん増えていく楽しさ

胞子体が確認できてからは、一気に変化が分かりやすくなりました。
日が経つごとに数が増え、少しずつ大きくなっていきます。
毎日のように容器をのぞき込んでは成長を確認するのが楽しみで、この頃が一番ワクワクしていた時期だったと思います。
同じように育てても結果はバラバラだった

今回、いくつかの容器に分けて育てていましたが、すべてが順調に育ったわけではありませんでした。
中には、ひょろひょろと間延びしたような胞子体になってしまったものもありました。
同じタイミングで、同じような環境で育てているつもりでも、ここまで差が出ることに驚き「環境のわずかな違いで成長が変わる」ということを実感しました。
順調に見えた中で発生したトラブル(粘菌)

さらに、別の容器では粘菌が発生してしまいました。
培地の一部と容器の壁に黄色いゼリー状のものが現れ、「なんか変なものが出てきた」とかなり不安になったのを覚えています。
順調に進んでいると思っていたタイミングだっただけに、この変化には少し焦りました。
ここで感じたこと
この時期は、胞子体が増えていく楽しさを感じる一方で、
・うまく育つもの
・徒長してしまうもの
・トラブルが出るもの
と、同じように育てていても結果にばらつきが出始めたタイミングでもありました。


2021年2月13日~ スペーシングの判断とその後の変化
スペーシングの必要性を知る

胞子体が増えてくるにつれて、明らかに密集している部分が目立つようになってきました。
調べていく中で、「スペーシング(間引き)」という作業が必要になることを知ります。
ただ、育成スペースにも限りがあり、すべてを理想的な間隔に広げることはできませんでした。
そのため、一部はスペーシングを行い、残りはそのまま様子を見ることにしました。
スペーシングしたもの・しなかったものの違い
スペーシングをしたものはスッキリとした見た目になり、「これで順調に育つだろう」と感じていました。
しかし、実際には思っていたようにはいきませんでした。
スペーシングした胞子体は、葉が出ては枯れ、葉が出ては枯れを繰り返しなかなか成長しませんでした。

一方で、スペーシングせずそのままにしていた容器の胞子体は、意外にも元気に育っているものもありました。

このときは正直、「何が正解なのか分からない」という状態でした。
試行錯誤(肥料・LED導入)

成長が止まっているように感じたため、環境を見直すことにしました。
・肥料(マグァンプK)を与える
・LEDライトを導入する
など、できることを少しずつ試していきます。
すると、徐々にではありますが、成長が再開したように感じる変化が見られました。

良かれと思ってやったことで失敗(蒸れ)

さらに成長を促したいと思い、日光に当てることも試しました。
しかしこれが裏目に出てしまい、容器内が蒸れてしまう結果に。
その影響で、多くの胞子体がダメージを受け、枯れてしまうものも出てきました。
「良かれと思ってやったことが逆効果になる」ことを、このとき強く実感しました。
それでも生き残った株たち

厳しい環境の変化の中でも、生き残った胞子体もたくさんありました。
状態はバラバラでしたが、しっかりと成長を続けてみるみる大きくなってきました。


再度スペーシングを行い、鉢上げサイズへ

生き残った胞子体を中心に、改めてスペーシングを行いました。
今度は成長の状態を見ながら、無理のない範囲で間隔を確保していきます。
その結果、少しずつ安定して成長するようになり、最終的には鉢上げできるサイズまで育てることができました。
この経験から感じたこと
この一連の流れを通して感じたのは、
スペーシングは株を大きく育てるために必要な作業だということです。
ただ、実際にやってみて分かったのは、それだけではうまくいかないということでした。
光・温度・湿度・肥料といった環境が合っていなければ、スペーシングをしても成長は止まってしまいます。
逆に環境が合っていれば、多少密集していても元気に育つこともありました。
また、良かれと思って行った直射日光による管理が、蒸れにつながり、大きなダメージになったことも印象に残っています。
「間隔を空けること」だけでなく、「環境を整えること」の重要性を強く実感した経験でした。
2022年5月23日~ 鉢上げ|ここでも失敗と試行錯誤
鉢上げできるサイズまで成長
苗が500円玉のサイズぐらいになり鉢上げを行いました。

スペーシングを経て、生き残った胞子体の中には、しっかりとしたサイズまで成長したものが出てきました。
「ここまでくれば鉢上げできそう」と感じ、次のステップへ進むことにしました。
うまくいかない株も出てきた
鉢上げ後、すべてが順調に育ったわけではありませんでした。
中には、成長が止まってしまうものや、そのまま弱ってしまう株もありました。
今思えば、そういった株は根があまり生えていませんでした。
環境の違いで成長が変わる
鉢上げ後は、水やりのバランスがこれまで以上に重要になると感じました。
同じように管理していても、成長するものと止まるものがあり、環境の影響の大きさを実感します。
試行錯誤しながら少しずつ安定
試しながら管理方法を調整していく中で、徐々に安定して育つ株も出てきました。
すべてがうまくいくわけではありませんでしたが、その中で残った株はしっかりと成長を続けてくれました。

このとき感じたこと
鉢上げの時だけに限りませんが、株を大きくするためには根を育てることがとても大切なんだと感じました。

2022年7月27日~ 板付け|766日かかってたどり着たゴール
板付けできるサイズまで成長
胞子葉が出てきました。ここまで来たら、ついに板付けです。


胞子から育てた株がようやく板付けまでたどり着いたことで、大きな達成感を感じることができました。
ただ、ここまでの過程は決して順調なことばかりではなく、多くの失敗や試行錯誤の積み重ねでした。
その中で感じたのは、
「やり方」だけでなく「環境」と「観察」がとても重要だということです。

これから胞子培養を始める方へ
これから挑戦する方は、最初からうまくいかなくても大丈夫です。
自分も失敗を繰り返しながら、少しずつ進んできました。
この記事の経験が、少しでも参考になれば嬉しいです。

766日やって分かった具体的な失敗と原因




胞子培養は順調に進んでいるように見えても、さまざまなトラブルが起こります。
実際に自分が経験した主な失敗は以下の通りです。
- カビの発生
- 粘菌の発生
- アオコの発生
- 徒長してしまう
- 蒸れによるダメージ
どれも一度は経験する可能性があるトラブルですが、それぞれに原因があります。
例えば、
・湿度が高すぎることでカビが発生する
・光量不足によって徒長する
・通気不足や温度上昇で蒸れが起きる
といったように、ほとんどが環境に関係しています。
実際にやってみて感じたのは、「作業」よりも「環境管理」の方が結果に大きく影響するということでした。

ビカクシダ胞子培養でよくある質問
胞子培養はどれくらい時間がかかる?
ビカクシダの胞子培養は、想像以上に時間がかかります。
自分の場合は、胞子を播いてから板付けできるサイズになるまでに約766日かかりました。
もちろん環境や管理方法によって前後はありますが、
・発芽まで数週間〜数ヶ月
・前葉体から胞子体までさらに数ヶ月
・そこから成長して鉢上げ・板付けまで1年以上
といったように、長期戦になるケースがほとんどです。
途中で成長が止まったように感じる期間もあり、すぐに結果が出るものではありません。
ただ、その分、少しずつ成長していく過程を長く楽しめるのも胞子培養の魅力だと感じています。
初心者でも成功できる?
結論から言うと、初心者でも成功は可能です。
自分自身も、園芸経験がほとんどない状態から胞子培養を始めました。
実際には、
・カビの発生
・蒸れによるダメージ
・成長が止まる
など、さまざまな失敗を経験しましたが、その都度原因を考えて調整することで、最終的には板付けまでたどり着くことができました。
最初からうまくいくことは少ないですが、
・環境を観察する
・少しずつ調整する
この2つを意識することで、成功に近づくと感じています。
まとめ|胞子から育てるビカクシダ胞子培養はもっと面白い
ビカクシダの胞子培養は、時間も手間もかかる育成方法です。
実際にやってみて、思い通りにいかないことや失敗の方が多く、決して簡単なものではありませんでした。
それでも、
・小さな変化に気づく楽しさ
・少しずつ成長していく過程
・試行錯誤しながら環境を整えていく面白さ
は、株を購入して育てるのとはまた違った魅力があると感じました。
特に、胞子から育てた株が最終的に板付けまでたどり着いたときの達成感は、これまでの工程すべてがつながったような感覚があります。
正直、ここまで来るとは思っていませんでした。
だから今でも、「また挑戦したい」と思えるくらい、胞子培養の面白さを感じています。
これから挑戦する方は、最初からうまくいかなくても大丈夫です。
失敗しながらでも続けていくことで、少しずつ見えてくるものがあります。
そして気づいたときには、きっと同じようにこの面白さにハマっていると思います。


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